2023-01-01から1年間の記事一覧

正木浩一句集『槇』(ふらんす堂)

『槇』は、正木浩一氏の第一句集。1989年9月、ふらんす堂発行。 どうしても読みたくて図書館で取り寄せて貰ったりしたこともあったのだけど、その後たまたま入手することが出来た。 能村登四郎氏による序文に〈人の世の縁というものはちょっとしたきっかけで…

島田刀根夫句集『白秋』(青発行所)

『白秋』は、島田刀根夫さんの第一句集。1980年11月、青発行所発行。「青叢書」の第五集に当たる。 波多野爽波による序文に、虚子一行が爽波の下宿先を突然訪れて、花菜会の面々と急遽句会を行ったエピソードが書かれていて興味深い。 籐椅子を豪雨の玻璃に…

飯田晴『たんぽぽ生活』(木の山文庫)

『たんぽぽ生活』は、飯田晴さんの第二句集。2010年8月、木の山文庫発行。 平易な言葉ながら日常を異化するような句の組み立て方がされている。とても惹かれる句が多くあった。 つまみたる山を春野に下ろしけり 句集の冒頭の一句である。まるで一人称のよう…

島田刀根夫『玄冬』(邑書林)

『玄冬』は、島田刀根夫さんの第二句集。1997年11月、邑書林発行。 あとがきによると、第一句集の『白秋』以後の17年間の句をまとめた句集で、第一部と第二部に分かれているのだけれども、第一部は波多野爽波が亡くなる前まで選を受けられていた時代の作品ら…

飯田龍太『童眸』

『童眸』は、飯田龍太の第二句集。 角川書店の『飯田龍太全集』第一巻で読んだ。 昭和29年から昭和33年までの五年間の句をまとめた句集だが、482句収録されていて結構なボリュームがある。 大寒の一戸もかくれなき故郷 句集の巻頭の一句である。故郷の土地を…

山岸由佳『丈夫な紙』(素粒社)

『丈夫な紙』は、山岸由佳さんの第一句集。2022年12月、素粒社発行。 白色と茶色を基調とした装幀の色合いが、落ち着きがあって良い。 冬の鳥うどんほぐれてゆき無心 u音の韻律が楽しい。冷凍うどんを湯がいている景を思い浮かべた。菜箸でうどんを少しずつ…

山西雅子『沙鷗』(ふらんす堂)

『沙鷗』は、山西雅子さんの第二句集。2009年8月、ふらんす堂発行。 中田剛さんの栞文によると、句集名の「沙鷗」は、杜甫の五言律詩「旅夜書懐」の最終行「天地一沙鷗」から取られたとのこと。とても良い句集名である。 板の間に蝶の映れる極暑かな 障子を…

正木ゆう子『玉響』(春秋社)

『玉響』は、正木ゆう子さんの第六句集。2023年9月、春秋社発行。 「玉響」は「たまゆら」と読む。〈玉響は露。朝日に向かって見る露は透明だが、朝日を背にして見る露は反射光なので、虹のように色がある。〉と句集の冒頭に書かれている。 犇驫羴鱻淼灥森涅…

仲寒蟬『海市郵便』(邑書林)

『海市郵便』は、仲寒蟬さんの第一句集。2004年7月、邑書林発行。 柄澤齊氏による表紙のコラージュ画が良い。旧字体の句集である。 鯨の尾祈りのかたちして沈む 「祈りのかたち」に、指を組んだ人の手の姿を思い浮かべることもできるし、鯨の尾そのものが祈…

飯田龍太『百戸の谿』

『百戸の谿』は、飯田龍太の第一句集。 角川書店の『飯田龍太全集』第一巻で読んだ。 「昭和二十八年」から始まり「昭和二十三年以前」まで遡る構成で、それぞれの年ごとに春・夏・秋・冬の句が並んでいる。 黒揚羽九月の樹間透きとほり 「昭和二十四年」の…

南十二国『日々未来』(ふらんす堂)

『日々未来』は、南十二国さんの第一句集。2023年9月、ふらんす堂発行。 『俳コレ』や『天の川銀河発電所』といった俳句のアンソロジーで作品を目にしたことはあったけれども、こうやって句集でまとめて読めるのは嬉しい。 どろどろと天冥くなる牡丹かな 「…

中岡毅雄『伴侶』(朔出版)

『伴侶』は、中岡毅雄さんの第五句集。2023年8月、朔出版発行。 穏やかな句調であるが、境涯を詠んだ句の多くは凄みがあった。 間村俊一さんによる装幀も素晴らしい。 ものの芽にもつとしづかなときを待つ 助詞の「に」が効果的に使われている。「ものの芽」…

阿部完市『水売』(角川書店)

『水売』は、阿部完市の第十句集。2009年2月、角川書店発行。 2004年から2008年までの句を収めているらしい。 阿部完市の句を音読していると、韻律が呪文のようで楽しい。 梟や電球やしかし名詞かな 句集の中でいちばん訳が分からなかった句である。助詞「や…

池田澄子『月と書く』(朔出版)

『月と書く』は、池田澄子さんの第八句集。2023年6月、朔出版発行。 メタリックな表紙カバーがかっこいい。章のタイトルも「朋」「露」「光」「水」「星」「霧」「蝶」と漢字一文字に統一されていて、スタイリッシュだ。 木々嬉し秋ョ秋ョと小鳥たち 「秋ョ…