島田刀根夫『玄冬』(邑書林)
『玄冬』は、島田刀根夫さんの第二句集。1997年11月、邑書林発行。
あとがきによると、第一句集の『白秋』以後の17年間の句をまとめた句集で、第一部と第二部に分かれているのだけれども、第一部は波多野爽波が亡くなる前まで選を受けられていた時代の作品らしい。
秋山を神輿が降りてくるところ
「~ところ」といえば、波多野爽波の〈鳥の巣に鳥が入つてゆくところ〉がまず思い浮かぶ。掲句は秋祭だろうか。大勢が神輿を担ぎ、山の坂道を慎重に下っていく様子を、「秋山」と「神輿」のみの描写で単純化している。
觀潮後ベツドがふたつある部屋に
波多野爽波に〈墓参より戻りてそれぞれの部屋に〉という句がある。「部屋に」が共通しているが、爽波の句は日本家屋のようで、掲句はホテルの一室に一人で戻ってきたような印象があった。
蘖や徑は池へとくづれ落ち
辭書を見に次の閒へゆく栗の花
崩れ簗から道へ出て明るさよ
お涅槃の犬を洗つてやることに
讀む仕事書く仕事蟲名殘かな