『伴侶』は、中岡毅雄さんの第五句集。2023年8月、朔出版発行。
穏やかな句調であるが、境涯を詠んだ句の多くは凄みがあった。
間村俊一さんによる装幀も素晴らしい。
ものの芽にもつとしづかなときを待つ
助詞の「に」が効果的に使われている。「ものの芽」にとっての静かな時間というのは、それを見つめている「私」にとっても望ましい静寂である。
月見草母を詠まねば何詠まむ
この句の後に母親の看病から亡くなるまでの一連の句が並んでいる。中七下五は直情的であるが、「月見草」という季語を取り合わせたことで、遙かなものに対する祈りを感じさせて切ない。
芹摘の空すきとほるところまで
くぐる時しんとにほへる茅の輪かな
妙高の雪のまぶしき櫻かな
一匙のメロンを口にしたるのみ
てのひらにすくへば落葉あたたかし