『海市郵便』は、仲寒蟬さんの第一句集。2004年7月、邑書林発行。
柄澤齊氏による表紙のコラージュ画が良い。旧字体の句集である。
鯨の尾祈りのかたちして沈む
「祈りのかたち」に、指を組んだ人の手の姿を思い浮かべることもできるし、鯨の尾そのものが祈りを表す抽象的なモニュメントのようだとも解釈していいのかなと思った。確かに人が祈るときは、蹲りながら少し沈むこむような動きとなる。
炎天へ四十六億歳の雲
とんでもない時間のスケールに驚いた。四十六億年といえば地球の年齢である。生物が誕生と消滅を繰り返してきた地球の上に存在し続けた雲の姿が、タイムラプスのように思い浮かんでくる。
鷺草の飛び立つまではゐるつもり
海市からとしか思へぬ郵便物
短夜は短夜なりの獏がゐる
家康はどうにも好かぬ日向ぼこ
その昔繪本でありし櫻貝