南十二国『日々未来』(ふらんす堂)

『日々未来』は、南十二国さんの第一句集。2023年9月、ふらんす堂発行。

『俳コレ』や『天の川銀河発電所』といった俳句のアンソロジーで作品を目にしたことはあったけれども、こうやって句集でまとめて読めるのは嬉しい。

 

どろどろと天冥くなる牡丹かな

「どろどろと」に驚いた。暗雲が垂れ込んできている空を大げさに表現していて不穏さがある。牡丹も風に吹かれてゆっくり大きく揺れているのだろう。

 

雲割れておほきなひかり浮寝鳥

薄明光線という自然現象なのだけど、「おほきなひかり」と書かれるとモーゼの奇跡的な神秘性がさらに増してくる。浮寝鳥によって水辺の景も浮かんでくるし、鳥たちの無関心な姿も愛らしい。

 

集まつてだんだん蟻の力濃し

てのひらのよろこんでゐる寒さかな

寒林は読まるるを待つ詩のごとし

水遊びする少年のG-SHOCK

臍に汗溜めて鍛ふる体かな