飯田晴『たんぽぽ生活』(木の山文庫)

『たんぽぽ生活』は、飯田晴さんの第二句集。2010年8月、木の山文庫発行。

 

平易な言葉ながら日常を異化するような句の組み立て方がされている。とても惹かれる句が多くあった。

 

つまみたる山を春野に下ろしけり

句集の冒頭の一句である。まるで一人称のように書かれているが、春の野に山をつまむぐらいの大きな指を幻視したのだろう。明るく魔術的な句だと思った。

 

月光の机は揺れてゐたりけり

「月光の机」とは、月光が当たっている机の省略表現だろう。机の表面に揺らめく月の光が、机そのものの揺れのように感じられる。シンプルな表現ながら、印象深い句であった。

 

あたたかや歩けば歩くほど山へ

魚屋の刺身のとどく祭かな

草よりも樹木のにほひ熱帯夜

テレビよりあふるる光ちちろ虫

関東の土を這ひたる寒さかな