飯田龍太『童眸』

『童眸』は、飯田龍太の第二句集。

角川書店の『飯田龍太全集』第一巻で読んだ。

昭和29年から昭和33年までの五年間の句をまとめた句集だが、482句収録されていて結構なボリュームがある。

 

大寒の一戸もかくれなき故郷

句集の巻頭の一句である。故郷の土地を一望できる場所から眺めているのだろう。「大寒」という季語に視点人物の心理を結びつけるのは安易な読みだと思う。外に人の姿もなく静まりかえった景が眼前に広がっている、ただそれだけのことだろう。

 

ぼうふら愉し沖に汽船の永睡り

この句は〈「ぼうふら」を眺めるのが「愉し」い〉という人物の心情をそのまま書いているのだろう。近景と遠景で、ぼうふらの忙しない動きと汽船の全く動かない姿の対比が効いている。

 

ペンの金木立に遠く涼意みつ

文学の果の白靴並べ干す

月の道子の言葉掌に置くごとし

皹癒えても忘れずに手を隠す

姉の瞳の奥に冬空小鳥ゆく