山岸由佳『丈夫な紙』(素粒社)

『丈夫な紙』は、山岸由佳さんの第一句集。2022年12月、素粒社発行。

白色と茶色を基調とした装幀の色合いが、落ち着きがあって良い。

 

冬の鳥うどんほぐれてゆき無心

u音の韻律が楽しい。冷凍うどんを湯がいている景を思い浮かべた。菜箸でうどんを少しずつほぐしているのだろう。たしかに何も考えなくていい時間である。阿部完市の〈ローソクもつてみんなはなれてゆきむほん〉を意識している句かもしれない。

 

南口改札まばら虹既読

こちらはi音の韻律である。「既読」といったら、現代だとLINEの専門用語みたいになっているのがおかしい。この句の場合は、南口改札を抜けたら、空に出ている虹がぱっと目に映ったのだと思った。

 

うすばかげろふ空に時計の針余り

朝寝して明るい林ひらけをり

赤い羽根濡れないほどの雨の降る

春や鈴誰かの吸殻に混じる

冷蔵庫ひらいて鳩のゆめのなか

 

丈夫な紙

丈夫な紙

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