大石悦子句集『百囀』(ふらんす堂)

『百囀』は、大石悦子の第六句集。2020年7月、ふらんす堂刊。

 

紙雛とは山に折り谷に折り

波郷忌の抱へて運ぶ落葉籠

オリオンに一献シリウスと一献

草の絮空ゆく倭建命かな

まみどりの栄螺の肝は吾に呉れよ

喪に籠る栗の砂糖煮などをして

泊船のごとしづまりぬ月の家

 

大石悦子句集『有情』(角川書店)

『有情』は、大石悦子の第五句集。平成24年12月、株式会社角川書店刊。

 

けむり茸七つ蹴つたり足潰る

へうたんのくびれぐあひを侃々す

飯蛸の飯ゆたかなる播磨かな

蟬茸のあはれ紅さすひとところ

流れくる桃を百年待つとせむ

椿象は来るはパソコンは鈍いは

三日来ぬ梟よ吾も三日老い

 

小野あらた句集『毫』(ふらんす堂)

『毫』は、小野あらたの第一句集。2017年8月、ふらんす堂刊。

 

絵も文字も下手な看板海の家

天井に光揺らめく紙漉場

大き蛾は大回りして誘蛾灯

テーブルに七味散りをりかき氷

草餅の指に凹みて戻らざる

教室の後ろ灯さず夜学かな

噴水の落ちゆく水の吹かれけり

 

毫

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大石悦子『耶々』(富士見書房)

『耶々』は、大石悦子の第四句集。平成16年9月、富士見書房刊。

 

犀に降るさくら孔雀に降るさくら

しぐれ虹二つ目は藍濃かりけり

手を入れてみたき帚木紅葉かな

草や木に十一月の雨降るよ

友になりたし石榴十ではどうだらう

きつねのかみそり付きの墓地なれば買ふ

なんのこれしき落鮎の腹の砂

 

 

大石悦子『百花』(角川書店)

『百花』は、大石悦子の第三句集。平成9年3月、株式会社角川書店刊。

 

菖蒲湯の一夜経たるは禍々し

海抜を訊きて涼しくなりにけり

半分の半分を賜べ草の餅

晩白柚美童と一夜ゐるごとし

桃二つおほいなる御亡骸に

初夢の鯤の目玉にこだはりぬ

晩景のととのつてきし冷し酒

 

 

大石悦子『聞香』(富士見書房)

『聞香』は、大石悦子の第二句集。平成元年8月、富士見書房刊。

 

要ゆるびたればすなはち秋扇

ものごとにはじめとをはり冬瓜汁

誰も彼も大白鳥の羽欲りぬ

螢火や山が動いてゐるごとし

白息の太きがサラブレッドなり

寝返れば佳き音したり簟

双六の山河畳んでありしかな

 

大石悦子『群萌』(富士見書房)

『群萌』は、大石悦子の第一句集。昭和61年10月、富士見書房刊。

 

サーカス去りし地くぼみをり夕焼す

父とゐるしづけさに雪食むことも

優曇華に夫呼べば子も犬も来て

青畳月に漣なせりけり

青蜜柑溢れて浦の何でも屋

赤蕪の百貫の艶近江より

あけぼのの雲にちからや光悦忌