『月と書く』は、池田澄子さんの第八句集。2023年6月、朔出版発行。
メタリックな表紙カバーがかっこいい。章のタイトルも「朋」「露」「光」「水」「星」「霧」「蝶」と漢字一文字に統一されていて、スタイリッシュだ。
木々嬉し秋ョ秋ョと小鳥たち
「秋ョ秋ョ」の表記に目を引かれる。「アキョアキョ」と鳴く小鳥を想像すると楽しい。「木々嬉し」というのは人間側の主観であるが、コミカライズされた小鳥たちと相まって、明るい秋の景となっている。
蝶よ川の向こうの蝶は邪魔ですか
「蝶よ」と呼びかけ、人間への思いを仮託している句である。今の時代だと、ロシアによるウクライナへの侵略戦争のことを暗に示しているのかなと思ってしまう。「ですか」と丁寧語で問いかけられているのが、読者である自分にもこの問いを強く突きつけられているように感じる。
芒は光なのか揺れると光るのか
夕されば灯して家や隅に葱
行ったことあるあるテレビニュースの瀧
寒くなるからと電話をくださりぬ
春寒き街を焼くとは人を焼く