『玉響』は、正木ゆう子さんの第六句集。2023年9月、春秋社発行。
「玉響」は「たまゆら」と読む。〈玉響は露。朝日に向かって見る露は透明だが、朝日を背にして見る露は反射光なので、虹のように色がある。〉と句集の冒頭に書かれている。
犇驫羴鱻淼灥森涅槃西風
「ほんひゅうせんせんびょうせんしんねはんにし」とルビが振ってある。同形反復の漢字がひしめいている様は、涅槃図でよく見る動物たちがお釈迦様の周りに寄り集まって涙している様子を想起させる。
千枚漬真円少しづつずらし
図形や立体といった幾何的なものの見方というのも、正木ゆう子さんの句の特徴かなと思う。漬物屋の店頭かは分からないけれど、「千枚漬」に対してもその幾何的なものの見方が発動しているのが可笑しい。
おほかたは蕾よ梅のうれしさは
くもの糸ひひらぎの葉を転めかし
美しいデータとさみしいデータに雪
馬の腹の如きの垂れて蚊帳の天
絶食のときも歯磨き十三夜