読んだ句集について拙くとも何か書き残しておいた方がいいかなと思って、『犬々記』を始めました。
飽き性なので心配なのですが、一か月に2冊ぐらいのペースでゆるく続けていきたいと考えています。
2021年12月に相子智恵さんの第一句集『呼応』が出版されたので読みました。
気になった句について少しずつ書いていきます。
手拍子に変はる拍手やクリスマス
楽団か何かのクリスマスコンサートでしょうか。演奏終了後のばらばらだった拍手が徐々に揃っていってアンコールを求める手拍子になるという瞬間は、自分も何度か経験しているのですが、こういう風に句にすることができるのかと驚きました。
阿修羅三面互ひ見えずよ寒の内
「阿修羅」といえば興福寺にある国宝の阿修羅像がまず思い浮かぶのですが、あれは奈良時代に造られた像なので、千年以上もお互いの表情を見ていないのだなと思うと感慨深いです。
ハンガーにハンガーかけて十二月
冬は重ね着してハンガーにかけておく服の量も増えますが、ハンガーを描写する最低限の言葉でその状況をよく伝えています。ブログだとどうしても句が横書きになってしまうのですが、句集で縦書きで読むとハンガーが縦に連なっている感じも出ていて面白いです。
ホチキス針コの字光りや雪催
「コの字光り」という言葉に完全にやられました。これから先はホッチキスの芯を詰め替えようとするたびに「コの字光り」だなあと思うようになるでしょう。
鰻重を食ひおほせたり底照りぬ
「食ひおほせたり」という書きぶりから鰻重を完食した満足感が伝わってきます。米粒一つ残ってないことを確認したときに、薄く残ったタレによって重箱の底が照っていたのでしょう。涎が出ます。
砂払ふ浮輪の中の鈴の音
鈴が入っている浮輪ありましたね。なんだか懐かしいです。三橋敏雄に〈鈴に入る玉こそよけれ春のくれ〉という超有名句がありますが、浮輪に入っている鈴もよいですね。
花時やカツ丼の蓋閉ぢきらず
これは食べる前のカツ丼なのですが、「花時」という季語の明るさも相まって想像するだけで食欲が爆発しそうになります。
好きな句はいくらでも挙げれそうなのですが、程々にしておきます。
左右社さんの本は装幀も素晴らしいので、ぜひ手に取ってもらいたいなと思います。